第11章 元帥との思い出?
私が次に起きたとき、
外は真っ暗で部屋には電気がついていた。
起き上がると、
体は大分調子が良くなっていた。
男は部屋にいない。
ベッドから出た私は、
部屋の中を物色...というよりは
単純に見て回った。
ベッドと机と椅子。
小さな棚とクローゼットだけの質素な部屋だ。
そして、男の持ち物らしき物は
使い込まれた様子の
トランクと、黒いコートだけ。
ー 何が入ってるのかな...
興味をそそられて椅子に置かれた
それらに手を伸ばす。
「それには触るなよ」
突然後ろから響いた声に、
私は飛び上がった。
恐る恐る振り返ると、戸口に背中を預けて
腕を組んだ男が
面白がるような笑みを浮かべて
私を見ていた。
男が腕をほどいて私に近寄る。
ガタン、と背中を
ぶつけた私に構わずに男が
手を伸ばしてきた。
ー ...殴られる?
そう思った途端、
恐怖が沸き上がった。
「.......っ、ぶたないで!!」
目をぎゅっとつむって
叫ぶと、男が驚いた気配がする。
そのまま震えていると、
肩に手がかかった。
「ぶたねぇよ、怖がるな。
お前喋れたのか?」
上目遣いに男を見上げると、
男は思いの外優しい目をしていた。
「熱下がったか確かめようとしただけだ。」
改めて額に手が当てられる。
「...熱は下がったみてぇだな」
男がふっと笑う。
「間抜けな面だな。
お前、名前何て言うんだ?」
ぽかんと男を見つめていた私は、
首をふるふる振った。
ー あの店で呼ばれていた名前は捨てた。
私の思い詰めた瞳に何か感じたのか、
男が苦笑する。
「別に無理して言わんでいい。
年は?いくつだ?」
「14」
短く答えると男はふむ、と
考え込むような顔をして
立ち上がった。
「俺に、お前と同い年の弟子がいるんだ。
いつか会わせてやるよ」
男の言う弟子の人に、興味は無かった。
変わりに、軽い驚きを感じて男を
見つめる。
ー 私の面倒を見てくれるの...?
無くしていた警戒心を思い出す。
ー 何の見返りもなしに、
助けてくれるわけない...!
その時、私は初めて男に
警戒心を向けた。