第11章 元帥との思い出?
突然空気が変わったことに気付いたのか、
男は微かに眉をひそめて
私をジロリと見下ろす。
「何だ、やっと感情らしいのが
出てきたと思ったら
今度は俺を警戒するのか?
お前、損なヤツだな」
鼻で笑われた。
今、男は確かに私をバカにした。
怒りも沸き上がる。
「今さら警戒しても遅いだろう。
どうせ、お前には行くとこがねぇんだ。
大人しくしてろ」
椅子に座り、
睨む私に向かって言う男。
ー ...確かに行くあてはない。
面倒を見てくれるというなら...
「見返りは何?」
警戒心はたちまち消えていた。
バカにされたことに対する
ささやかな怒りも。
ー 何の下心も無しに人を拾うわけない。
奴隷にしたいのか、それとも...
私を玩具にするのか。
.......男なんてみんな一緒だ。
私の中から、また感情が消えていた。
無表情に戻った私を見て、
男は片眉を跳ね上げた。
ー 表情が動かないわりに、
眉がよく動く人だな...
感情の無い私は淡々とそう思った。
すると、男は口元を笑みに変える。
「ほぅ.......?見返り?
お前、何持ってんだよ?」
「私自身がある」
言った途端に男が吹き出した。
そのまま爆笑する。
「っ...!何がおかしいの!?」
怒りが戻ってきた。
男はお腹を抱えてひとしきり笑うと、
ニヤニヤしたまま私の頭をポンポン撫でた。
「お嬢ちゃん、もう少し大きくなってから
また誘ってくれ。
俺はガキには興味ねぇ」
こぶしを握りしめ、
立ち尽くす私を見やった男は
ため息をついた。
「.......大分めんどくせぇ人生
送ってきたんだな、お前。
見返りはいらん。」
そう言って立ち上がる。
「そういえば、お前。
自分が何日寝てたか分かるか?」
ふいに聞いてきた。
私は朝から眠って今は夜になっている。
「1日?」
「3日だ。腹減ってるだろ、
飯持ってきてやるよ」
私は驚いた。
男が出ていくと同時に
お腹が鳴る。
ー 3日も寝てた?
全く実感が湧かなかった。