第11章 元帥との思い出?
~回想~
「.......おいおい、生きてるか?」
私は、声をかけられたことにすら
気づかなかった。
肩を揺すられ、初めて顔をあげる。
赤い髪の、仮面の男。
心配そうでもなく、淡々とした
無表情で私の生死を確認すると
男は私を抱き上げた。
逃げようとも思わなかったのだ。
心が麻痺して、別の意味で
人を警戒しなかった。
ただ、ゆらゆら揺れるリズムが
心地よくて私はいつの間にか眠っていた。
ふと起きると、私はふわふわのベッドにいた。
光が部屋に満ちている。
人工の灯りではないことにすぐ気付いた。
ー .......朝...?
頭が割れそうに痛くて、
私は身じろぎした。
ー ...だるい。体に力が入らない。
「起きたのか?」
近くから声がする。
動くのは億劫だったけれど、
とりあえず上半身を起こした。
「飯食えるか?」
昨日の男が、椅子に
どっかり座ってタバコを吸っていた。
答えない私に苛立ったのか、
煙を吐き出しながら
眉をひそめる。
「おい、なんか喋れねぇのか」
タバコの煙と頭痛に顔をしかめ、
私は頷いた。
「あ??喋れねぇのかよ」
男はため息をついた。
ー 喋れると思うけど...答えるのがめんどくさい。
立ち上がると、男はガチャッと
ドアを開けた。
そして、指を私に向ける。
「食べ物持ってきてやるから、
そこにある服に着替えてろ」
その指をベッドの横の棚に
スライドさせ、私が服を確認したのを
見届けてから部屋を出ていった。
私は、布団をめくって
ベッドに腰掛けた。
だるい体を動かして服を手に取る。
模様も飾りも何もない、
シンプルな白無地の長袖ワンピース。
黒いスパッツと、上に羽織る
茶色のもこもこカーディガンもあった。
元々着ていた黒のワンピースは
あちこちほつれて汚れていた。
客のために誂えられた
フリルたくさんのワンピース。
ー 私は、きっともうこんな服は着ないだろうな。
脱いだそれを、私はゴミ箱に
放り込んだ。
カーディガン以外を身に付ける。
胸元に下がったペンダントを
私は指でくるくる回していた。
そこに、ちょうど男が戻ってきた。