第16章 【 12 】意外と頭の良いやつ
今日も4チームに分かれて それぞれのメニューをこなし、一日の最後にまた試合を行う。
「今日は麻倉君と一緒が良いなぁ〜!」
今朝のことには触れず、またベタベタとひっついてくる彼女。
くっつけば可愛いってわけちゃうで。
露骨に顔を歪め、『僕はカツオくんが良い』ときっぱり言うた。
一瞬怪訝な顔をしたけど 昨日とはちがう態度から察したのか、わざとらしく シュンッとして「わかった」と返事した。
堀尾くんとカチローくんには あとで謝ろう。
A,Bチームは堀尾くんたちが、C,Dチームは僕たちが担当することになった。
カツオくんにはドリンク作りと 練習内容の記録を頼み、僕は使用済みのタオル等を洗濯する為 洗濯物を持ってコートを離れた。
洗濯機は宿舎の方にある為、コートからは少し距離がある。
『〜♪〜♪〜』
鼻歌を歌いながら 洗濯機に洗濯物を入れていると、後ろから勢いよく誰かが抱きついてきた。
その誰かは振り返らなくても 検討がつき、無意識に不機嫌になる。
『・・・・・なに?』
スポーツマンばかりの合宿で、こんな華奢な腕と 甘ったるい匂いをまとっている人は一人しかいない。
「麻倉くん不足だから充電しに来ちゃった☆」
A,Bチームのサポートをしているはずの 氷帝のマネージャーだ。
『来ちゃったとちゃうよね。僕、仕事サボる人嫌いやから』
腰に回された腕を解き、振り返ることなく淡々と返す。
あぁー・・・
ほんと やだ。
なんで女子ってこんなめんどいんや、、、
「そんなこと言わないでよ...」
二人きりだと優しくしてもらえるとでも思っていたのか、はたまた予想通りで今後の展開を考えての演技なのか。
きっと僕が感情的に何か言えば泣き出して、そのタイミングで誰かが来る?
それとも自傷行為を僕の所為にする?
どちらにしても どうでも良い。
僕には関係ない。
僕は彼女の存在を無視して、仕事を続けた。