第5章 【04】良き笑顔は腹黒かもしれないにゃ
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先ほどのことが頭から離れず、ふらふら歩いていると、トンッと誰かにぶつかってしまった。
『すんません。ふらふらしてました』
「ん?あぁ、大丈夫??」
柔らかい声音に癒される。
その声の主を見ようと顔を上げると、色素の薄いサラサラの髪の男子生徒がいた。
襟元を見ると“Ⅲ”のバッジが付いてるから01つ先輩や。
「何か悩み事?」
『いや・・・まぁ・・・・・はい』
初対面でそこまで気にしてくれるのかと感動する反面、深く話す必要はないかと思ってしまう。
せやのに「僕で良ければ話を聞かせて?」なんて言われたら、話してしまうんやから不思議や。
「なるほどね・・・」
たまたまぶつかってしまった廊下の窓際に寄り、二人とも壁に凭れながら話しをした。
話とは、今日会ったばかりの後輩に言われたことの意味が分からないということ。
一応男の子ではなく女の子には変えて。
だって僕も男の子設定やし。
『ただからかわれてるだけなんですかね?』
「う~ん・・・今の時点では何とも言えないね。
相手のコが君に一目惚れして、本当にその気なのか。
君が相手のコに興味が無いことにムッとしたのか。
もう少し様子を見てみたら?」
グルグル回ってた思考回路もショートする前に、先輩に回避してもろて、なんかスッキリした。
『はい!』と笑顔で答えれば先輩もニコッと微笑んで、「あまり考え込まずにね」と頭をポンポンしてくれた。