第5章 その5.毎度傷ついてはいけません
「……おはよ、」
「………お、おはよう、ございます…、」
急に変な汗がジワジワ出るのがわかる。
大野さんその顔が、その声が、あまりにも色っぽすぎて、なんだか見てはいけないものを見た気がした。
「起きて、たんですね…」
「起きて、た」
い、いつからですか…。
私、馬鹿みたいじゃないですか。
「……起こし、ました?」
「…起こし、た。」
知らない間にうるさくしたのかもしれないと思い、「すみません。」と謝った。大野さんは「…いや、」と口を開いて
「…の匂いがしたから。」
と言った。
私は自分の洋服をクンクン、と匂う。
………マック臭…?食べ物の匂い…?
…非常に微妙である、
好きな人に食べ物の匂いが自分の匂いって言われることほど微妙なことはない。これも日頃の行いか、と後悔し、これからは大野さんの前でパンばかり食べるのはやめようと心に誓った。