第5章 その5.毎度傷ついてはいけません
「…はあ、」
「そんなに気になるなら聞けばいいじゃん。」
有稀はまるで息をするくらい当たり前のように言った。
「……勇気が…ない、」
「どういう関係なのかわからなきゃ、動きたくても動けないでしょ。は大野さんを幸せにしたいんでしょ?」
・・・そうです、有稀さん。
私、大野さんが辛そうなのは嫌です。
またあの笑顔で笑ってほしいんです。
それは私に向けられた笑顔じゃなくても
大野さんが悲しいのは嫌なんです。
大野さんに相手がいるのは何となくわかっていたことなのに、自分の目でそれを確認した瞬間、頭が真っ白になって、そんな大切なことも忘れていた。
そうだ、大野さんの辛い恋を、私が明るい恋に変えるんだ。
「…有稀、ありがとう…!私の取り柄は忘れっぽくてポジティブなところだったのに、それすらもすっかり忘れてた!」
「うん、だから可愛いんだよね。」
有稀が笑って私の頭をポンポンと撫でる。
有稀に触れられるとなぜか、やる気が溢れてくる。
「有稀さん、大好き。ちょっとだけ待ってて。」
「…はいはい、頑張ってきなさい。」
食べかけのポテトを残して、席を立つ。
今行かずにはいられなかった。