第5章 その5.毎度傷ついてはいけません
「…はあ、」
学校の敷地内にあるファストフード店で目の前にあるポテトを1本だけ手に取り見つめると、凄く重たいため息が出た。
そんな私に有稀が深刻そうな顔をする。
「何?やっと気付いた?最近太ってきたこと。」
「…ええ!?太った!?私、太った!?」
「いや、知らない。適当。」
有稀がポテトをつまみながら私に言う。
「…有稀さん、そういうとこ先輩そっくりです。」
「やめれ。」
と眉を潜めてMサイズのドリンクをストローで吸い上げ、わざとズズズっと音をならした。
私がため息をつくのは太ったからじゃない。大野さんが優しい囁く相手、「ゆずさん」が気になって気になって、仕方がないから。
何にも興味がない大野さんが、電話越しであんなに必死だった。特別な人なんだって、私でもわかってしまう。