第1章 その1.目で追いかけてはいけません
先輩との出会いは入学したばかりの時で、
有稀と購買に行く時だった。
「有稀!ほら、こんなのもある!
やっぱり、高校の小さな購買とは違うね。」
好物の菓子パンが沢山あって嬉しくて、両手いっぱいに抱えきれないくらいのパンを、有稀にどうだ、と見せつけた。
「、あんたそれいつ食べるの。」
有稀の顔がひどく歪む。
「え?今からだよ。」
「全部?」
「全部。」
「んな食べれるわけない。」
ペシっと頭を叩かれた。こんなことは日常茶飯事だ。
「いったぁ、食べれるよ。全部好きだもん。」
はあ…と大きなため息をつかれると暴言を吐かれた。
「ブクブクに太って泣け。」
想像したら怖くなったので、袋に入ったそのパンを1つ、そっと売り場に戻そうとした時、
「う、わっ、」
突然の後ろからの衝撃。そのせいで体のバランスを崩し、両手で持っていたパンを床にぶちまけてしまった。
…わ、私のパンたちが…