第1章 その1.目で追いかけてはいけません
「はあ…、今日もかっこいいなあ、先輩。」
頬杖をついてため息混じりにポツリと呟くと、有稀が呆れたように言った。
「もう入学して3ヶ月も経つのに、
それからアレと何もないってどういうこと?」
先輩のことをアレ呼ばわりするこの人は、私の一番の友達、高城有稀(たかしろ ゆき)。
サバサバした性格でかなりの美人。まだ大学に入学して3ヶ月だというのに、いろんな人からのアプローチを受けている。
有稀にとってはたった3ヶ月かもしれないけど、私にとってはまだ3ヶ月だい!
なんて心の中で反抗したら、
「言っとくけど、アレは倍率高いからね。」と言われた。
「…それを言いますか有稀さん。」
そう、先輩は多分モテる。いや、多分でもない。何度も女の人と2人でいる姿を見たことがある。しかもいっつも違う人。しかも皆美人。
そんなとこ見せつけられちゃあ、お近づきになれるわけないし、ましてや話しかけられるはずもない。