第9章 その9.自分だけ、ではいけません
無理矢理に近い。
私は嫌がる柚希ちゃんを大学へ連れて行った。
「…ねえ、柚希ちゃん」
「何よ。」
「いつもこんなに視線浴びて、恥ずかしくない?」
柚希ちゃんの隣にいて気付く。やっぱりこの人は尋常じゃないくらい、目を引く子なんだ。隣にいるだけで、人の視線が痛いくらいわかる。嫌な視線じゃなくて、驚いたような、芸能人でも見るような好奇な視線。
私の問いかけた質問にニヤリ、と笑って
「バカじゃない、気持ちいいわよ。」
と女王様のように言い放つ。
「…さすがです、柚希さん。」
「は?バカにしてる?」
「めめめ、滅相もありません!」
私が柚希ちゃん(いや今は柚希様が似合うけど)にひれ伏していると、男性の声が近づいた。
「かーのじょ!」
その声のした方を見るとうちの学生らしき男子が3人、今では使わない(正直ダサい)、そんな懐かしい声のかけ方をしてきた。
「可愛いね、」
柚希様に声をかける。
私はガン無視ですか、
おい!一人くらいこっちに興味もって!
…お願い!
て、何懇願してんだ私。
「よく言われる。」
ニッコリ、天使の笑顔で首を傾げるとふわふわのボブが微かに揺れて柚希ちゃんの可愛さを更に手助けしてくれる。
「うっわー、高飛車な感じ。可愛いと最高だね。暇なら俺らと遊ぼうよ。」
な、なんなの初めて見た、王道ナンパ。
目が点になる私を
柚希ちゃんが1度だけチラッと見る。
ゆ、柚希ちゃん…その人たちから離れ
「いいよ。」
ってええええええ
私は!?私いるのに!?
なに、何ですか、
みんなで私をガン無視ですか!
開いた口が塞がらなくて口をパクパクさせていると、私の後ろから聞き覚えのある声がした。
「ねえちょっと、それ、俺のなんだけど。」