第8章 その8.落ち込むだけではいけません
「どういう…」
私がその言葉の意味を聞こうとすると、
後ろから声がした。
「事故だった。」
「…柚希、ちゃん。」
いつの間にかその場にいた柚希ちゃんが、眉を潜めて立ち尽くす。一番会ってはいけない人がそこにいた。
「その日、おじいちゃんの運転で智は買い出しに付き合ってくれた。」
柚希ちゃんが、ゆっくり話始める。
それは大野さんが柚希ちゃんと一緒にいる理由。
「大型トラックのハンドル操作ミスで対向車のおじいちゃんの車にぶつかって転倒。あいにく救急病院は手一杯で、おじいちゃんは気を失った智を助けるために自分よりも先にと、手当てをお願いした。後回しになったおじいちゃんの体力が持つわけもなく、智だけが助かったの。」
そんな、それは大野さんが
誰もがそう思うと思った。
大野さんは悪くない、
大野さんのせいで、なんてことはない。
「………」
何も言わない大野さんを見た。
「………、」
かける言葉が見つからない。
今、何を言っても、届かない気がした。
私のいる場所と大野さんのいる場所は違っていて、今、私がここにいること自体が場違いな、そんな気さえした。