第8章 その8.落ち込むだけではいけません
「ちゃん、」
柚希ちゃんが沈黙を破る。
「は、はい…」
「智も、取るの?」
柚希ちゃんが悲しそうに眉を下げて私を見る。その瞳がチラチラ揺れると、目には沢山の滴が溜まる。
「ゆ、ずきちゃん…」
「智まで、私の所からいなくなっちゃうの?」
「わ、たしは…」
柚希ちゃんの言葉に、訴えに、何も言えないでいると、ずっと黙っていた大野さんが「ゆず」と口を開く。
「俺はここにいるよ。」
大野さんは真っ直ぐ柚希ちゃんを見る。
「ゆずから離れたりなんて、しないから。」
邪魔なのは、私じゃないか。
大野さんの選んだ人生であれば
私に何を言う権利があるんだろう。
何もかも
振り出しに戻ったような気がした。