第3章 35円と価値の変わらないもの
何か弾丸が飛んだようには見えなかったのだが?
「彼はこの事故で免停、市役所はクビの刑務所行きだったのよ。」
幼女が聞いているのもおかまいなしに、説明をする彼女。
「だからこの銃でこの事故の記憶を消して、その上に二度とハンドルを握れなくなるくらいのトラウマを植え付けたのよ。外回りの仕事の彼は職を失ってほぼ歴史通りね!誤差は現金価値にして13万円!!」
この後、彼女がすることは僕にもわかった。
……、ていうかこの事故(未遂)も、僕より遥かに高額なのかよ(怒)
「そして、あなたも……」
彼女は、幼女に話しかける。
「あなたには、これから沢山の困難が待っています。私はそのうちの一つを排除しただけ……… でもあなたは一度もあきらめずに、人類の歴史に貢献するの。困難に挑み続ける、あなたを尊敬します。でも、それは少し先のお話……」
気づかないほど自然な動きで銃口を向ける彼女、幼女がおびえる前に素早く引き金を引いた、恐らく彼女なりの優しさなんだろう。
ゆっくりと倒れる幼女を抱き留めて、そっと横たえる彼女。
悲しげな横顔だった。
尊敬する人物に銃口を向ける感覚は、僕には分からない。
彼女の心境は計りようがない……
だが、いつまでもほっとく訳にもいかない、話題をかえて空気を変えよう。
だから僕は、さっきから気になっていた質問を、わざとあっけらかんと聞いてみることにした。
「その子って、結局いくらなの?」
「……って、このロリコン鬼畜人身売買変質者あぁぁぁっっ!!!」
何気なく聞いたつもりが、とんでもない発言になっていたと、後から自分でも気が付いた。
だが時すでに遅く、思いっきり引っ叩かれた後だった。