第12章 『本性』
ニュースでは先日のレストランの事など話題にも上がらない。
あそこで失われた人の命は誰の目に留まることもない。
「…あの人達のことはいつ気づかれるんだろう」
私は確実に月山…いや、美食家が必ず襲って来ると確信していた。あの目は私と金木を完全に獲物としてみていたから。
私はどれだけ時間があるかわからないから準備できることはしておこうと思い大学に行って家に帰れば、呪具と札を作っていた。
「ねぇ、紅蓮。」
「なんだ?」
「多分今回の相手は今迄の喰種とは比べものにならないぐらい強いと思う。
だから、先に言っとく。
もし、私に何があっても出て来ないでね。」
「ふざけるな!そんなことが出来る訳がないだろう!!」
「そうだ。私達にとっては陽菜、お前が最後の主なんだぞ。」
「勾陳…、たとえそれでもだよ。
喰種は人と魂の根幹では同じなんだ、だから貴方達と戦わせる訳には行かない。」
私はこれだけは譲らないと、頑なに首を縦に振らなかった。
彼らは私のこの意思に関しては絶対に考えを曲げることが無いことを知ってるから渋々だが引き下がってくれた。
「酷なことを言ってるのはわかってる。
それに、生きて帰ってくるから大丈夫だよ。」
そう言って、先程から作っていたある呪具を首にかけて出掛ける準備を始めた。
「ちゃんと神域でいなよ?この時代の現世は貴方達には過ごしにくいんだから」
そう言うと勾陳はスッと隠行したが、紅蓮は中々戻ってくれなかった。
「大丈夫だよ。私はそんな簡単に死ねるように出来てないんだから。だから待っててね」
そう諭すように言うと「絶対に無理はするな」とだけ言い残して戻っていった。
私は彼らを見送ってから自分も家を出た。