【ぬらりひょんの孫】兵庫伝説〜義賊さんと姫路城の姫〜
第2章 姫路城の姫
「刑部姫?聞いたことねぇな。誰だよその姫」
義賊の頭である紐使いの男は首を傾げた。
「姫路城の天守閣の最上階に住んでる、城の主みたいな姫だよ。年に一度だけ殿様が一人で対面して、そのときに城の運命を告げるらしいぜ」
紐使いの男の仲間である清助は、興奮気味に言った。
「それでその姫がどうしたんだ」
口を挟んだのはもう一人の仲間、吉次郎だ。
「それが、姫は九つの宝を持っているらしいんだ」
「九つの宝…?」
「舞蝶(まいちよ)、桜雨(さくらあめ)、紅雪(べにゆき)、朽葉(くちのは)、夢路(ゆめのみち)、春輝夜(はるかぐや)、碧月(あおのつき)、銀朱(ぎんしゅ)、緋星(あかのほし)…この九つだな。ただ分かっているのは名前だけで、これが何なのかは分からない」
清助は人差し指を立てた。
「これが何なのか、気にならないか?」
男は目の前にある清助の人差し指を掴むと、横に倒した。
清助から小さな悲鳴が上がる。
「…俺たちは義賊だ。だから貧しい者に盗んだ金をばらまいてる」
男は真っ直ぐに清助を見た。
「これは金じゃないだろ。だとするとどっかで売らなきゃならねぇ。そうなると足がつく」