第5章 昔話
全部ミグラの語りとなります。
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今から十数年前…。
一人のとある少女が生まれた。
少女は生まれたときからとある国の王宮にいた。
その子の父がその国の王様だったからね
少女はとても充実した日々を過ごしたさ
勉学も武道も学べた。おいしい食事もきらびやかな服も気持ちのいい寝床さえも整っていた。
周りの人もとても優しかった。
ただ、とある一つを除いては幸せだった・・・。
少女は自分の母に会ったことがなかった。
父に問いただそうともしたさ。
「私のお母様はどこですか?」ってね。
けれど、そんなことをしていられるほどの時間は王にはない。
「そんなものはいない」ってあしらわられた。
「母親の愛情」を知らずに育った少女はとても冷めていた。
ずっと誰かに愛されることを知らなかったんだ。
そして、誰かを愛する心を知らなかった。
ずっと『孤独』だったのさ。
友達も作れないような王宮だからね
明るい希望に満ちた世界を知らない少女はいつしか笑うことを忘れた。