第3章 第三章
「志々雄様、新月村には温泉があるそうですね」
「ああ」
「湯浴みのお手伝い、致します」
「新月村が国盗りのうちの小せぇ一歩だ。新月村のようにどんどん使える村を増やしていく。まぁ、小さな事だがな。今の腐った明治政府の力を徐々に削いでいくには丁度いい」
「素晴らしいですわ。小さな事も見逃さず目を背けず自分のものにしていく……。いずれそれが志々雄様の大きなお力に変わります」
「抜刀斎がどう動くか……少し気がかりだがな」
隣に居る宗次郎さんを見たらにこにこして志々雄さんを見ていた。
そういえば……なんで宗次郎さんは志々雄さんなんかについているんだろ。
あっ……なんかにって言っちゃった。失礼だよね。訂正。志々雄さんに……。なんで志々雄さんについているんだろ。
宗次郎さんはこんなに優しくて良い人なのに、極悪人の志々雄さんについていく必要なんて無いのに……。
由美さんもだよ。
宗次郎さんも由美さんも、優しい普通の方々なのに、極悪人の雰囲気を漂わせている志々雄さんに、なんでついていっているんだろう。
宗次郎さん……もしかして私と同じ……?
私は宗次郎さんに助けられたから宗次郎さんについていこうって決めた。
宗次郎さんが悪い人でも。
ついていこうって。
もしかしたら宗次郎さんも志々雄さんに救われたりしたから志々雄さんについていっているのかも。
由美さんも見た感じしっかりした女性……悪に染まらなそうな女性……由美さんも志々雄さんに助けられた事があったのかも……。
だとしたら志々雄さん……案外良い人なのかな。
悪い人だけど、宗次郎さんと由美さんを救った……良い人。
少なくとも、今、志々雄さんは宗次郎さんにとって大切なお方……。
宗次郎さんが大切に思っているお方……だから私も志々雄さんを大切に思おう。
志々雄さんを慕おう。