第1章 第一章
両親と一緒に買い物に出かけていた。
下駄をかたかた鳴らせて、
「お母さん、このかんざしお母さんに買うね!」
「まぁ、ありがとう時音」
「似合いそうだな」
「まぁ、あなたったら」
お母さんとお父さんが微笑み合った。
私は自分のお小遣いでかんざしをお母さんに買って贈った。
「ありがとう時音」
お母さんが笑顔になる。
「時音にも買ってやらないとな」
お父さんが私に桃色のかんざしを買ってくれた。
「わぁ、ありがとうお父さん」
私は桃色のかんざしを髪につけた。
「似合うぞ時音」
「えへへ」
嬉しくて笑みがこぼれる。
私達は家への帰り道を歩いた。
「時音、こんな日までも刀を持ち歩く必要は無いだろう?もう廃刀令が下されているし、平和な世の中になったんだから」
「でもいつ何があるか解らないから。油断できないでしょ」
「でも出先で刀を持っていると警察が……」
「お父さん怯えすぎ!いつもの威厳はどうしたの?」
お父さんが私に抜刀術を教えてくれる師範だ。
お父さんは幕末の頃、侍だった男だ。
かなり強いけど、争いを好まない人だった。
「あれ、あの人も刀持ってる」
目の前を歩いてくる柄の悪そうな男が刀を腰に携えている。
「本当だ。廃刀令を知らないのかね」
「私と同じで用心しているのかも」
「そうか」
「今日は夕食何がいい?時音、あなた」
「そうだなぁ……」
私は笑顔で口元に指を当てて考えた。