ときめきメモリアルGirl's Side【佐伯瑛】
第2章 未来の1ページ
.
「佐伯くん、後はよろしくね」
「えっ?あっ、はい」
「じゃあ、行ってくるわね」
行ってくるって、一体どこに?
「はい、行ってらっしゃい」
どこにって疑問を残しつつ、条件反射で行ってらっしゃいだなんて言っちゃったけどさ。
なんかいつもと様子が違う。
何だろうって首を傾げながらも、夏海の待つであろう部屋に向かい階段を上る。
「夏海、入るぞ」
「シーッ!」
「なっ…はぁ?」
「だから、静かに!」
「オギャーっ!」
扉を開けていきなり静かにしろって言われたって、意味判んないし。
しかも何だよ、この泣き声。
なんか赤ん坊みたいな泣き声じゃないか?
「もう、瑛くんが静かにしないから、陸が起きちゃったじゃない」
「はぁ?だからさ、さっきから全く意味が判んないんだけど、俺。大体、陸って何だよ?誰だよ?」
明らかにそれって男の名前じゃん。
お前、俺に何隠してんだよ?
何となく面白くなくて、お前にふて腐れた顔を見せる。
だって仕方ないだろ?
こうして会いに来たってのに、様子は変だし、男の名前をお前から聞かされるし、それに赤ん坊は泣いてるし…って、赤ん坊?
「お前、まさか子供?」
「あぁ、やっぱりお母さんに聞いてたんだ?」
いやいや、何も聞いてないって。
それに…子供?
誰の子供だよ、ってか、何がどうなってんだよ?
俺の言葉に勝手な結論を出して納得したのか、うんうんと頷きながら見知らぬ赤ん坊を抱き上げる。
ワンワンと声を上げて泣いている赤ん坊は、夏海に抱き上げられ少し大人しくなる。
その胸に顔を埋めるみたいに。