ときめきメモリアルGirl's Side【佐伯瑛】
第2章 未来の1ページ
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「ほら、陸、ママが来たぞ」
そう言って母親である叔母さんの腕に陸を返すと、少しだけ陸の表情が悲しげに歪んだ気がしたのは、俺の瞳に涙が浮かんでたからかも知れない。
「本当にありがとう。夏海にもよろしくね。あの子も淋しがるだろけど…」
「えぇ、僕もそう思います」
可愛がってたからな、夏海、陸の事。
「そうよね?佐伯くんも淋しいかしら?」
「えぇ」
「だったら…早く夏海と子供作りなさいよ、じゃあ、またね」
あぁ、なるほど…って、えーっ!?
今、なんかとんでもない事言われなかった?俺。
あぁ、夏海のいつもの不用意な発言は、絶対遺伝なんだ。
おばさんといい、陸のお母さんのこの叔母さんといい、みんな凄い事サラッと言い過ぎだぞ?
全く…言われた俺の身にも少しはなってくれよなぁ…はぁ…。
「夏海…起きてたのか?」
お前の部屋に戻るとベッドに座り、両手をベッドについて、窓から遠くを眺めるようなお前の姿が目に入った。
ドアの前に居る俺からじゃその表情は窺えないけど、判るよ。
お前、泣いてんだろ?
「陸は?…帰っちゃっ…た…の?」
震える声で俺に訊ねる。
「あぁ、叔母さんが今迎えに来て。夏海によろしくって言ってた」
泣いてる素振りを俺に見せまいとする姿がいじらしくて、隣りに腰掛け、背後から抱き締める。
「…瑛くん?」
「淋しいんだろ?お前…。いいよ、泣いたってさ…」
「…泣かないよ。でも…淋しいね」
小さく小さく紡がれる言葉が、この部屋の静寂に呑み込まれてゆく。
さっきまであんなに騒がしかったのに…。