第5章 【オメガバース】 月島 影山 菅原
※このシリーズは基本R-15になります。ギリギリの所でぼやかします。シリーズ通してマネ夢主です。
先輩マネ夢主(Ω)×後輩月島(α)
「ナイッサー」
「次ィ!」
「アス‼︎」
放課後の校舎は、人の発する熱気で活気づいている。スポドリを作るために何度か水道と体育館を行き来しながら、ボールが跳ねたり叩かれたりする音を聴く。
「潔子さん、スポドリ出来ました。そっちの仕事手伝います」
「……緋紗、ありがとう」
「えへへ」
我が部の女神、潔子さんに頭をぽんぽんされて嬉しくない奴などいない。コートでレシーブ練中の西谷と田中のギリィと歯をくいしばる音が聞こえるような気がするが無視。
「そういえば……緋紗」潔子さんが少し声を潜めて私に問うた。「今月の抑制剤、ちゃんと貰ってきた?」
いつもクールで無表情な潔子さんが、心配そうに眉を垂れている。珍しい。
「----大丈夫ですよ、潔子さん。今日は持ってないんですけど、家にありますから」
「……私、緋紗が心配。こんな環境にいるんだから、抑制剤は常備しなきゃ」
「平気ですよ。私は『β』ですから」
「緋紗」
「さぁ、潔子さん、この前の試合のスコア整理しましょう!」
「……」
……少し前まで、私は私を呪った。
何でこんな体に生まれてきたの。どうして平凡すら与えられないの。私は何もしてないのに、どうして。
中学三年生の時に、突然訪れた抑えきれない性欲に、ただ戸惑うしかなかった。βの母に介抱され、薬を飲まされ、そこで初めて自分の境遇を知った。ヒートだなんて言われても、とてもじゃないけど受け入れられなくて。
私は名目上βを名乗る『Ω』。基本、Ωの中で世の中に己の性を公開してる人達は、αとつがっている。私は運命の相手なんて未だ見つからないから、きっとこのまま隠し続ける。
潔子さんはβだ。彼女は、部内で私がΩだと知る唯一の人。いつだって気にかけてくれた。
そうして支えてくれる人がいても、やっぱりあのヒートには慣れない。