第4章 菅原孝支 思惑の指先 ②
『おめでとう菅原。気に食わない奴から嫌いな奴にグレードアップよ』
とか冷静に言った私は、その場だけの余裕を保つだけ保って、家に帰ってベッドにダイブした瞬間に崩壊した。
あの長いけど焦らすようなキスの意味は何。気に入らないって何。女の子はみんな、自分に笑顔向けてくれるとでも思ってるの。
私も何やってるんだ。あんな簡単な口車にやすやすと乗って、言質取られて……まさか、ああやって言質を取られるとも思わなかったけど。あんな言い方なら、
「私とキスしたかったみたいじゃない……」
思い返すのはどアップの菅原の顔。熱量を持った唇と、身体に触れるその白くて長い指と、余裕のない潤んだ瞳----
ああ、多分今、私顔真っ赤だ。
その日、初めてお風呂で溺れかけた。
翌日の朝、友人である道宮結が教室の前で仁王立ちしていた。
「おはよう緋紗」
「おっおはよう結……なしたの?」
「ちょーっとおいで?」
「ハイ……」
有無を言わせず私の腕を引っ張っていく結。妙に男前である。
「緋紗寝てないでしょ」
「なっなぜ」
「隈が出来ますよおじょーさん。何考え事してたの」
にっこり。という表現が正しく笑う結。
「えっと……」
「さーて大人しく白状しようかー」
「……誰から聞きましたか……」
私は諦めの早い人間である。