第1章 月が綺麗ですね(黒子のバスケ:火神夢)
肉一枚だけでも大迫力だったが、パンや具を合わせるととんでもない代物が出来上がった。正直、見ているだけで胃もたれがするのだが、火神の為だと思えばなんのその。信じられない程の大食い男は、平気でコレをペロリと頂いてしまうのだろう。大きなバーガーが食べやすくなるように、ユリアはそれを四等分にザクリと切る。そして形がなるべく崩れぬよう、それぞれ四つに切り分けた物に大きな爪楊枝を真ん中に刺していった。
本場の味を再現する為の材料を全て計算すると高い出費になってしまったが、出来は大満足である。あとは早く火神が家を尋ねて来るのを待つだけだ。その間キッチンで使用したフライパン、まな板、包丁やその他の器具を洗っていれば、玄関から鍵の開く音が微かに聞こえる。
大慌てで蛇口の水を閉めてエプロンで濡れた手を拭えば、ユリアは小走りで玄関へと向かった。そして案の定、合鍵を使って中へと足を運ぶ彼の姿がある。
“Hey, Hun. I'm home.”
(ただいま)
“Taiga!”
(大我!)
“Smells good in here. What did you make?”
(良い匂いすんじゃねーか。何作ったんだ?)
“Come over and see.”
(こっち来て見て)
あどけない表情でユリアは火神の手を引く。ユリアにとってはまだまだ異国である日本だが、こうして共に食事が出来るのは最高の幸せなのだと噛みしめる。
ー了ー