第12章 陰陽師には近寄るべからず
私は怒りを宥めるように、そっとお母さんに声を掛けた。
「お母さん、遊園地行っていい?」
「ダメじゃ! またあの時の二の舞になったらどうするのじゃ!」
「だから、誤解だって! もう、お父さんに言いつけるから!」
そう言うととたんに弱弱しい声になるお母さん。
「ぬ………、し、仕方ないじゃろう。舞香の事が心配で……」
よし、もう一押し!
続きを言おうとすると、リクオ君が突然口を開いた。
「舞香ちゃんのお母さん、大丈夫。ボクが責任持って送ります!」
「それが信用ならぬのじゃ!」
「え……っ!?」
吃驚するリクオ君。その斜め後ろに居た氷麗ちゃんが、聞き捨てならない、という風に怒りの声を上げた。
「ちょっと! 若を愚弄する気ですか!? いくら雷獣でも許せません!」
「雷獣? 何っすかそれ?」
「わー、わー、島君、何でもないよ! ちょっと氷麗! 黙ってて!」
氷麗ちゃんの言葉を聞きキョトンと目を瞠る島君。
それに両手を振り慌てるリクオ君がなんだか、大変そうに見えてしまった。
私は、お小遣いよ、さようなら……、と心の中で涙を流しつつ、最後の切り札をお母さんに提示した。
「お母さん、遊園地で可愛い小物見つけたら、お土産に買って帰るよ。それでも、ダメ?」
じーっと見つめ続けると、可愛い小物に心を揺り動かされたのか、しぶしぶながらお母さんは頷いた。
「フリル多めの物じゃぞ」
やった!
「じゃあ皆、ちょっと待ってて!」
私は「物に釣られてる!?」と驚く3人に向かってそう言うと、階段を駆け上がり、服を着替えた。
お母さんが居るから、ズボンがはけないのが残念だが仕方ない。
小物を身につけると、私は玄関で待っていた3人と合流した。
そして、ウキウキ気分で遊園地に向かった。
うわー、楽しみ、楽しみー!