第9章 覚醒
登校すると、奴良リクオ君は休みだった。
そうだよね。血がいっぱい出てたから……
ちゃんとご飯食べれてるかな?
熱とか出てないかな?
大丈夫、かな?
授業中や休み時間、ずっとぐるぐる奴良リクオ君の事を考えていると突然名前を呼ばれた。
「舞香ちゃん。朝から元気無いけど、どうしたの?」
「あ……」
顔を上げるとそこには首を傾げるカナちゃんが居た。
周りを見ると、クラスメイト達は皆、帰り支度をしている。
いつの間にか1日の授業が終わっていた。
「あ、あれ!? もう放課後!?」
目を見開きながら驚きの声を上げると、机の傍に立っていたカナちゃんは苦笑する。
「そうだよ。今日は生徒会室で部活だって」
「へ? 生徒会室?」
どうして?
清継君は生徒会の役員でもないのに?
首を傾げる私に、カナちゃんは答えをくれた。
「ほら、舞香ちゃんが腹痛で早退した日があったでしょ? あの日午後から生徒会役員の選挙だったの。それで清継君が生徒会長に当選しちゃったのよ」
「え?でも、清継君って1年生だよね? なんで生徒会選挙に出られるの?」
「うーん……私も良くわかんない」
常識外れだ。
もしかして、『ぬらりひょんの孫』の世界だから、なのかな?
いや、でも……
考え込んでる私にカナちゃんは話しを切り、笑顔で口を開いた。
「じゃあ、部活に行きましょ」
「う、ん……」
考えても判らないので、私もさっさと考えるのを放棄し、カナちゃんと並んで生徒会室に向かった。
ガラッと生徒会室の扉を開けると、真っ白に燃え尽きたような格好で椅子に座る清継君の姿が飛び込んで来た。
清継君はブツブツと何かを呟いている。
長机の上に座った巻さんと鳥居さんは、呆れた目でそんな清継君を見ていた。
島君は、困ったような表情をしながら少し離れながら清継君の様子を伺っている。
「清継君、どうしたの?」
カナちゃんが巻さんに尋ねると、巻さんは半眼で清継君を見ながら、呆れた声音で口を開いた。