第9章 覚醒
今日もいつも通り学校に登校すると、私はカバンを机に掛け、そのまま席に着いた。
何気なく教室を見回すと、いつものように皆が好き勝手にざわめく中、奴良リクオは踵を伸ばし一生懸命黒板を消していた。その横で長い黒髪の少女が花瓶を両手で持ちながら、奴良リクオに向かって何か話し掛けていた。
それに時たま振り返り、何か答えている奴良リクオ。
毎日日直の仕事を手伝っている奴良リクオ。
ぬらりひょんの孫。お母さんの敵の孫。
覚醒して変身できるようになったら絶対、倒す!
敵意を込めて、じっと見ていると、突然耳元で名前を呼ばれた。
「舞香ちゃん!」
「わっ!?」
吃驚して右を向くとそこには、カナちゃんが居た。
「カナちゃん……?」
「やっとこっち見てくれたわね。おはよ、舞香ちゃん。どうしたの?」
「うっ。え、えっと、あの、ちょっと物想いに…」
「ふーん? じーっと前見ながら怖い顔してたけど……」
そう言いつつカナちゃんは前を向くと、数秒沈黙する。
そして唐突にバッと顔をこちらに向けると、ガシッと私の両肩を掴み顔を近付けた。
「舞香ちゃんっ! もしかして、あなたっ……!」
「ん?」
「リクオ君のことす……」
「おっはよー、カナ、舞香!」
「2人共どしたのー?」
カナちゃんが何か言い募ろうとすると、結構行動を共にする友達2人が現れた。
「ううん。なんでもない、なんでもない。2人共、おはよー!」
カナちゃんは私の肩から両手を放すと、2人の友達に首を振った。
しかし、2人の友達には通じなかった。
「あやしい」
「ねー。奴良の名前が聞こえたって事は……」
2人はにっと笑い合うと、1人はカナちゃんに1人は私の肩に腕を回した。
「さー、吐け! 恋話っしょ!」
「そーそー! 2人共、あいつの事好きだったり?」
「ち、違うわよっ! わ、私はっ!」
2人の攻撃にカナちゃんは真っ赤な顔をして必死に反論する。
顔を赤くしてる時点で説得力無いよ。カナちゃん。
でも……。私は敵である奴良リクオを好きになって欲しくない。