第9章 覚醒
「若。カバンを忘れてますぜ」
「うわっ、青!?」
奴良君も吃驚しただろうけど、私も後ろから出てきた青田坊さんに吃驚だ。
何時の間に出て来たんだろ?
青田坊さんが近付く音、全然聞こえなかったよ。
やっぱり、人間に化けていても、基本妖怪だから、足音しない?
そう思っていると、カナちゃんが訝しげな顔を奴良リクオ君に向けた。
「”若”?」
「い、いや、カナちゃんの聞き間違いだよ!」
「……そう?」
「そうだよ! ほら、有永さんも待ってるし」
必死で取り繕う奴良リクオ君。
名前を出され、私は思わず頷いてしまった。
えーっと…私って意外と流され易い人間……?
あははははー……
その後5人で浮世絵町駅まで一緒に帰る事となった。
この時間はまだ明るい。
4月頃はもう暗かったのに……
またすごく暑い夏がやって来るんだなぁ……
感慨にふけっていると、隣を歩いていたカナちゃんが、口を開いた。
「ずいぶん長く語ってたね、清継君」
うっ
あまり聞いて無かったから、どれくらい話してたか判らないっ!
私は「そ、そうだねー」と相槌を打ちつつ、詳しい内容までは話題にしないでー、と心の中で念じた。
と、前を歩いていた奴良リクオ君が振り返りながら、「そうそう」と相槌を入れる。
「清継君の妖怪知識には、まったくまいるよ。どこで仕入れて来てるんだろね」
「やっぱり、ネットじゃない? ほら、専用のホームページ開いてるし」
「そっか。そこに妖怪の情報が流れ込むんだね。でもさ、カナちゃん。妖怪怖いんじゃなかったっけ?」
「あら、そこが良いのよ!」
拳を握りしめ目を輝かせるカナちゃんに私と奴良リクオ君はキョトンとする。
そんな私達を置いて、カナちゃんはブツブツと呟きだした。
「それが当り前。逆にそれが魅力……」
??
言っている意味が良く判らない。
でもそう言えば、この場面も原作にあったなぁ……
確か、夜リクオ君に妖怪が営む食事処化猫屋に連れてって貰ったからだっけ?
現実のカナちゃんも同じ言葉を言っているってことは、あの晩化猫屋に連れてって貰ったんだ……
カナちゃん、そこで夜リクオ君が好きになったのかな?
私は、カナちゃんに視線を向ける。
カナちゃんは、すごく可愛い。
学年5指に入る程の可愛らしさだ。しかも、性格も優しい。
でも……