第8章 カナちゃんの誕生日
「家長さん!? どうしたんだい!?」
『清継くんっ! 今、妖怪に! 鏡の妖怪に襲われてるのー!』
悲痛な声が耳に届く度に胸が痛い。
後悔が次から次へと押し寄せて来る。
ごめん! カナちゃん! 私が行動起こさなかったから!
自分の保身の事ばかり考えてたから、妖怪に襲われたんだ!
「家長さん! 今、どこに居るんだい!?」
『トイレ! 学校の男子トイレ! あっ!』
途中で通信がプツンと切れる。
そして人形からは、雑音しか聞こえて来なくなった。
私は矢も盾もたまらず、屋上の入り口に向かった。
後ろから慌てたような清継君の声が追いかけて来る。
「有永さん! 待ちたまえ! 皆で一緒に探すんだ!」
でも、止まってはいられない。
私は、階段を駆け降りるとその階の男子トイレに向かった。
手洗い場の鏡を見る。
しかし、何も映っていないし声も聞こえない。
と、頭にある閃きが浮かんだ。
そう言えば、原作では主人公であるリクオ君が、鏡の中のカナちゃんを見つけた。
皆と離れて焼却炉でゴミを燃やしていたから、事情を知っているとは思えない。
ただ、偶然に鏡の中のカナちゃんを見つけた感じだった。
主人公のリクオ君が男子トイレの手洗い場に現れた理由。
それは、多分、ゴミ捨てで手が汚れたから、手を洗いに来たのかもしれない!
と言う事は、焼却炉に近い1階の男子トイレ!
現実が原作と同じとは限らない。でも!
「カナちゃん!」
私はカナちゃんが居なかった男子トイレを飛び出した。
と、屋上から降りて来た清十字怪奇探偵団の皆と鉢合わせをした。
「有永さん! 言いたい事は色々あるがそれは後だ! その男子トイレに家長さんは居たかい!?」
私は首を振りながら答える。
「ううん。いなかった!」
「そうか! 皆、下の階に行くよ!」
「判った!」
清継君の言葉に後ろに続く皆は頷いた。そして下の階に向かって駆け出す。
私も皆の後ろについて駆け出した。