第8章 カナちゃんの誕生日
胸倉を掴まれたまま顎に手を当て、キランと目を光らせる清継君に、巻さんは怒りを更に増したのか、そのままガクガクとゆさぶりはじめた。
「なんか、ムカつくーっ!」
「ハハハ。団員同士のスキンシップも重要だね」
「清継君。それ、なんか違うと思うっす」
何か勘違いをしている清継君に後ろに居た島君が控えめに突っ込んだ。
清継君と島君が来た事で、レッスンは一時休憩となり、清継君を中心をした場所に私達は集まった。
ん? そう言えば、奴良リクオ君と氷麗ちゃんが居ない。
いつものようにグラウンドの草むしりでもしてるのかな?
そんな疑問を持つ私を置いて、清継君は口を開いた。
「さて今日は、ある都市伝説を調べて来たんだ。妖怪大好きな君達は、早く聞きたいだろうが、その前に……」
清継君は持っていた鞄をゴソゴソ探ると、私の隣に座ったカナちゃんの目の前にピンクのリボンを掛けた箱を差し出した。
「家長さん。今日は君の生まれた日だ! 遠慮なくガンガン受け取りたまえ! マイファミリー!」
「あ、ありがと……」
面食らった様子でプレゼントを受け取るカナちゃんの後ろで、巻さんと鳥居さんが目を輝かせる。
「すっご! 高級そうな入れ物じゃん!」
「清継君、イケメン~!」
そして2人はカナちゃんの手元を覗き込んだ。
「家長、何入ってんの? 開けて、開けて!」
私も興味深々でカナちゃんを見る。
私達の視線に囲まれながら、カナちゃんはピンクのリボンをほどき、箱を開けた。
「「「「………」」」」
出て来たのは、不気味な人形だった。
何と表現したらいいだろう?
マーブル模様の肌に、大きく縫われた口。片目は大きなボタンが取り付けられている。
ブードー教に出て来る口を縫われた人間をぬいぐるみにした感じだ。
これがプレゼント?
って、あ。
私はまた原作を思い出した。