第1章 ドクターストップ!
ダメ、風邪が移っちゃう。
そう言う前に玲司はあたしに近付いて、熱を測るようにあたしの前髪をかきあげた。
おでこにそっと、優しいキス。
「ゆっくり休んで元気になってね。」
またギュッと抱きしめられて、さっきと同じ言葉なのに、あたしは熱に浮かされたように夢見心地。
顔をすりすり、玲司の首に埋める。
「今度は口にキスしてもらうもん。」
「うんうん。その意気だ。」
満足げに笑われて、またおでこにキスを落とされた。
「やっぱり熱いから早く寝なさい。」
「はーい。」
マスクを戻した玲司に笑顔を向け、あたしは聞き分けよく承諾した。
「じゃあね。おやすみなさい。」
「おやすみ。」
もう寂しくないです。十分なサービスをしていただきました。
さらに言うとKOどころかリングアウトするレベルで攻撃を食らったので、早くベッドで心行くまで悶えたいです。
あたしは閉じて行く扉の向こうの玲司に、何度も何度も手を振った。