第1章 ドクターストップ!
ソファーに並んで座って、コンビニ袋をガサガサ漁って。
出て来たのは、まばゆいばかりに美味しそうなハーゲンダッツ。
「多分ちょうど食べ頃だよ。」
「わーい!愛してる!」
「調子いいなぁ。」
どんなに笑われようが、あたしの意識はもうアイスに夢中。
早速開けて、綺麗なマーブル模様のソースに目を輝かせて、いざ、ハーゲンダッツ専用のスプーンを差し込む!
「いっただっきまーす!」
ヒヤッとトロッと魅了してくるアイスを、そのまま口の中へ・・・。
「・・・あれ?」
味が一切しなかった。
鼻詰まりの口では、アイスクリームの濃厚な味など分かるはずも無かった。
「うわー、ショック。」
せっかくこんなお高いアイスを、しかも買って来てもらったのに、味が分からないでは魅力7割減だ。
・・・よくよく考えると、味が分からないなんて分かりきってた事なのに、こんな注文をしたあたしは馬鹿でしかないよね?
「ごめんなさい。」
「なんで?」
同じようにハーゲンダッツを食べる玲司は、うまいうまいと嬉しそうだった。
「だって、せっかく買って来てもらったのに。」
しょぼくれるあたしに、玲司はまたしても優しい手であたしの頭を撫で回した。
「仕方ないよ。」
さすりさすりと髪を滑るその手は、きっとアイスよりトロトロと柔らかい。
「別に悪い事じゃないからさ。気にしない気にしない。」
それにこんな機会が無かったら俺もハーゲンダッツなんて食べてなかったし。ある意味ありがたいよ。
そう笑った玲司に対し、あたしも頭を撫でてあげた。