第1章 ドクターストップ!
「もしもし?」
1コールで出てくれた玲司。さすが自慢の彼氏です。
「アイス食べたいなー!」
電話の向こうの彼に、開幕ガラガラ声で我侭ジャブを1発。
驚きや呆れの混じった笑い声が聞こえた。効果はバッチリだ。
「いいよ。俺も典子に会う口実が欲しかったし。」
耳に響く低音ボイスでそんな右ストレートを繰り出されたら、こちらのハートは1発KO。
先日から風邪である事を知っている玲司。忙しいながらに気にかけてくれてたんだろう。
「心配してくれてたんだ?」
「そりゃあしますよ。」
今度は即答カウンター。やめてっ、典子のライフはもう0よ!
「典子、本当に大丈夫?長引いてるみたいだし、熱上がったんでしょ?」
「そうなんだよねー。大人しく寝てるのに。」
「日頃の疲れが出ちゃったんだよ。いつも頑張ってるからさ。お疲れ様。」
どこかでゴングが鳴り響く音が聞こえて、あたしはベッドにダウンした。
「ふにゃぁー。」
「お?どうした?」
「なんでもなーい。」
ニヤニヤと止まらない顔をこすりつけるように、あたしは枕に顔を埋めた。
嬉しいなぁ。嬉しいなぁ。嬉しいなぁ。
看病してくれる人がいるという事は、本当に嬉しいなぁ。