第2章 お調子者の考えることはわからない
「フューチャーアスペェエエエエクトッ‼」
どうやら終わったらしい。
画面には最後の歌詞、future aspectの文字が表記されている。
現時刻、午後6時。
どうやら私の予想通りにカラオケに行きたかったらしい彼はかれこれ一時間ほど一人で熱唱している。まぁ、私も少々歌ったけれども。
それよりも本題はどうなったのかと私が心の内で悪態をついていると、マイクを置いた彼がやっとそのことを口にしてくれた。
「で、歌ってスッキリしたことだし。本題に入るか♪」
気分上々である。
「高尾が歌いたかっただけでしょう?まぁ、いいよ。本題に入ろうか……」
的確なことを言いつつ、本日何度目かのため息を吐いた私は今日の朝の出来事を高尾に話した。
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「というわけで、何があったかと思う?」
「いや、それは本人に聞かないとわからないだろ」
まともな事を言われてしまった。
数十分ほど弟、優のことについて話すと私は上の事を高尾に尋ねてみた……が、もちろん返ってきた答えは正論だった。確かに双子の私でもわからないことをましては会ったこともない高尾がわかるはずがなかった。
「言葉が悪かった。……どうすればいいと思う?」
仕切り直してそう尋ねてみると、高尾は顎に手を当て随分と考え込んでいる。……こういう時、本当に友人がいてくれてよかったと思う。一緒に考えてもくれて、話を聞いてくれるだけでも十分に気が軽くなった私は友人のありがたみを改めて感じた。
優は友達はちゃんといるのだろうか?
私はまだ、優がバスケ部の友人と遊んでいるところを見かけたことがない。家に呼ぶなんて以ての外、遊びに出かけるのも小学校からの友人の誘いにしか乗っていないようだった。
そんな風に悶々と考えに浸っていたところに、高尾が妙にキラキラした様子で顔を上げた。
嫌な予感しかしない。
そう………こういう時こそ悪い予感とは当たるものだ。
「双子なんだから、二人が入れ替ればいいじゃん!」
ほら。
………本当にお調子者が考えることは分からない。