第2章 secret.1 契約
唇から柔らかな感触が伝わる。
それがキスだと理解するまでに時間はそうかからなかった。
体に力が入らない蓮華はそれを拒否することも出来ずに、だだ受け入れるだけだった。
そんな蓮華の唇を割って、指先の冷たさからは考えられない位の熱を持った男の舌が差し込まれる。
「んっ…んん」
口の中に鉄の味が広がっていき思わず蓮華の口から声が漏れた。
舌が絡み合う初めての感覚に蓮華は体を引くも、それを許さない男は唇を強く重ね合わせる。
混ざり合った唾液が…混ざり合った血液が…零れない様に、隙間なくピッタリと口唇は重ねられている。
その鉄の味を教えこむように、口内を犯す男の舌。
「ふっ…ん…」
やがてそれは甘酸っぱい味へと変わっていく。
そう、アダムとイヴが口にしたあの禁断の果実。
赤い、果実の味ー…。