第10章 君に会いたい
自分の部屋で机に向かう。
去年の秋、文化祭で配布した文芸誌をめくる。
自分の書いた短編小説を読み返す。
何度読み返しても同じ。
何か足りないと思う。
でも何が足りないのかわからない。
「エロいの…書いてみよかなぁ…」
私はノートパソコンを開いた。
…
休みの日、今日も先輩の部屋に来た。
二人で会うのは多分、今日が最後。
先輩は高校を卒業して、東京の専門学校へ行く。
二人きりの部屋で先輩は、私の肩を抱き、そっと手を取る。
「綺麗やね」
親指で私の爪を撫でる。
最後だし、休みの日だから、オシャレしたくてネイルを塗ってきた。
ドラッグストアのサンプルのシートで可愛いピンクだと思ったんだけど、実際自分の爪に塗ってみたら思ってたより地味だった。
でも先輩は気付いて褒めてくれた。
私はなんだか急に恥ずかしくなった。
うつむいて「うん」って頷いた。
先輩は優しく手を撫でた。
私は泣きそうになった。
「先輩…」
黙ってたら泣きそう。
私は口を開く。
「うん?」
先輩は首を傾げて、私の顔を覗き込む。
「私…好きでした、ずっと…。先輩のこと…」
先輩はにっこりと微笑んで応えた。
「俺も好き、ゆうちゃん」
私たちはキスをした。
そしてその後はだいたいいつもの通り。