第6章 ねぇどっち?後編
「おばさんにあげてもらった。はい、これ返す」
良太がさっき貸した参考書を差し出す。
「なんなの。やっぱりいらないの?」
私はため息をついて立ち上がる。
ぎゅ
……!?
良太が私をぎゅっと抱きしめた。
「えっ…? 良太?」
「僕が本当にこれ借りるために、さっき来たと思ってるの? ゆう、そんなんだからあんな男につけいられるんだよ」
「えっ…」
どうしたの、良太。
なんでいきなり…?
良太の髪が上からサラサラと私の頬にあたる。
良太…いつ私より背が高くなったんだろう…
そんなことにも気づかないまま、私たちはずっと毎日一緒にいたんだ。
「受験が終わってから…僕がちゃんとゆうの高校に合格してから…って思ってたけど…もうダメだ。
僕の目の届かないところで、ゆうがあんな男と過ごしてると思うと耐えられない。
好きなんだ…僕。ゆうのことが。ずっと好きだった。
だから…」
良太が私の目を見つめる。
そして唇を近付ける。
「ちょ…ちょっと待って! 待って、良太! いきなりそんなこと言われても…」
私は焦って、ちょっと身体を離す。
「いきなり…? ふーん…。まぁ仕方ないか…ゆうはボンヤリしてるから」
え。やっぱり私ってボンヤリしてるの?
「じゃあ、落ち着いてちゃんと説明する。
僕はゆうのことが好きだ。だから僕の彼女になって。
ゆうが僕の知らない学校で、僕の知らないヤツらと過ごしてるとしても…ゆうが僕の彼女なら、なんとかガマン出来る。
いいよね?」
良太が私に同意を求める。
私は…
「あ、あの…3日…。3日待って! 少し考えたい。だから…3日後にちゃんと返事する!」
「3日…? 長いな。んー…でもまぁ仕方ないか。いいよ」
長いんだ…。短いと思うんだけど。
「よく考えて、ゆう。僕たちの過ごした長い長い日々。楽しいことたくさんあったよね。あんな男のために捨てていいの?」
やっぱりどっちか捨てないといけないの?
「どっちを選ぶのか…信じてるよ、ゆう」
そう言い残して、良太は去っていった。
私は…
どっちを選べばいいの?
To be continued…