第5章 ねぇどっち? 前編
その朝は、遠藤くんと一緒に学校まで歩いた。
同じクラスだけど、2学期の後半まで話したことなかった。
でも話してみると意外と話しやすい…
ところどころ気持ち悪いけど。
「田中さん、文芸部ですよね。本が好きなんですか?」
「うん。好きだよ。国語得意だし…って中学のときね。今は国語も中の下だけど…」
「僕も本が好きなんですよ。中学のときは文芸部でした。高校でも入ろうと思ってたんですけど、パソコン部があったのでそっちに」
「あ、遠藤くんパソコン部なんだ。だからSuicaでジュースとか買えるんだね」
「いや! それ違います!」
…
今までと生活自体は変わってないだろうに、不思議なもので一度認識すると、遠藤くんにいろんな場所で出会うようになった。
だいたい朝は同じ電車に乗ってるし、部活の部室も近いし、図書室でもよく会う。
ある日放課後、図書室で勉強してたとき。
「あれ? 田中さん。勉強しているんですか?」
遠藤くんが私をみつけて声をかける。
「あぁ、うん。明日の数学の小テストに備えて。遠藤くんは部活中?」
「いいえ。今日は部活ないんで。本を返しに来ただけです。数学…一緒に勉強しましょうか。俺、得意ですよ」
「ホント? 教えて!」
…
その日は小テストの範囲の勉強を詳しく教えてもらい、一緒に下校した。
「遠藤くん、勉強教えるの上手だね。すっごくわかりやすかった」
いつも話す内容はわかりにくいのに、勉強になるとわかりやすいって不思議ー。
「そ、そうですか? 人に勉強を教えたことなんてなかったので、少し心配でしたがよかったです」
遠藤くんが嬉しそうに微笑む。
少し可愛い。