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ブーゲンビリア

第4章 入学式




ドキドキと高鳴る鼓動と共に、迎えたのは新しい人生の転機。今日は大学の入学式だ。朔夜とは、上手くやれてると思う。始まりはあんまりだったが、朔夜は基本的には私の意見を尊重してくれる優しい青年だ。時折私が自分の身を省みずに突発的な行動をしてしまうと、心配のあまり頑固な一面が出てしまうけれど。

ただ、一緒に生活していてどうしても耐えきれない事があった。それは―――目に見えて、私に対する好意を隠そうともしない事。朔夜が嫌なわけじゃない。迷惑なわけじゃない。決してマイナスな意味じゃない。それでも、包み隠さずにここまで好意を伝えられた事は、恥ずかしながら私の人生のなかで一度としてなかった。朔夜はきっと、私を一人の女性として好いてくれているんだろう。その視線に込められた熱情に気付かない程、私は鈍感じゃない。だからこそ、一つ屋根で一緒に暮らしているという事実がどうしてもむず痒く、意識してしまうのだ。

特に最近では朔夜のスキンシップが日に日に多くなっている気がしてならない。私も特に嫌なわけではないので拒む事はないのだが、どうしても、戸惑う。その度に朔夜は困惑して顔を赤くする私を見ては、嬉しそうに笑うのだけれど。そんな甘い甘い空気に、そろそろ私が耐えられないのだ。そういったものとは、今まで無縁だったから。

そんな私の事情もあり、今朝はやらかしてしまった。


―――

「めぐみ様、おはようございます。」
「あ、朔夜。おはよう。」

リビングに入ると、朔夜は今日も美味しそうな朝食を机に並べて眩しい笑顔で振り返った。水色のエプロンが良く似合う。将来は良い主夫になるんじゃないだろうか。そんな事を冷静に考えている私を尻目に、私の服装を見て朔夜は笑みを深める。

「今日は入学式でしたね。」
「うん。ドキドキして、昨日はなかなか寝付けなかったよ。」

はにかむ私は、先日一緒にショッピングモールへ行き仕立てたパンツスーツを身に纏っている。今まで制服と言う殻に守られていた身からすれば、スーツと言うのは酷く大人びて見え、憧れだった。自分にはまだまだだと思っていたスーツに身を通し、気持ちも幾らか背筋が伸びた様な感覚。変じゃないかな、と不安がる私に、朔夜は全身にスッと目を通してから近付く。そっと手が伸びてきて、何だろうと思う間もなく、朔夜は私の髪を撫でた。


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