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ブーゲンビリア

第2章 目が覚めて





「今の状況をめぐみ様が望まれたわけではない事は重々承知しています。それでも…、それでも、僕はめぐみ様のお傍に居たい。どうか、お傍に置いてくれませんか。」
「…え!?ちょ、篝さん、顔あげて下さいっ…!」

私の言葉に顔だけ上げた篝さんは、じっと慌てる私を見ている。その表情は、まるで捨て犬のようで。いけないと分かっていながら、今の状況すらまともに把握していないのに、動揺した私は頷かざるを得なかった。

「わ、分かりましたから!だから、そんな、やめてくださ、っ!?」

そういった次の瞬間には、抱き締められていた。昨日と違うのはお互い立ち上がっている事だが、だからこそより身長差が際立っているため深く深く抱き込まれてしまう。息をするのも苦しいほどに抱き込められ、やり場のない両手が宙を彷徨う。

「めぐみ様っ…!」

耳元で愛おしそうに、切なそうに呼ばれるその名前の響きが、まるで自分のものではないように思えてならなかった。それほどまでに甘さと熱を孕んだ響きだったから、否が応にも心臓が高鳴る。掻き抱くように背と腰に回された腕の力は一向に緩む気配がなく、私の逃げ道を塞いでいる。ワタワタする私に気付いているのかいないのか、その熱い抱擁は篝さんの気の済むまで解放されなかった。





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