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月という名の異名

第1章 光が差し込む


暗いしかし曇り一つない空
星が輝いて、たまに流れ星が通る
そんな時代
こんな時
私の隣にはいつも月が見守ってくれていた

-蒼白に染まる-

「ねぇ、蒼世…」

雪のように冷たい風が吹く
何かが、はらりと舞い降りてくる
それは紛れもなく君の手だ
君は、とても白い心の持ち主だ
私には分かる
その手が例え冷たくても貴方の想いが伝わってくる

「どうした」

私の手の上に重ねられた一回り大きな手
剣術をしてきた手は、とても頼もしい
だから術はあまり使えないけれど剣術だけは誰にも劣らない
その努力を私は知っている
それだからか、どうしても蒼世離れすることが出来ない
私は、いつからか蒼世が特別な人になっていた

そう私にとって蒼世は月
不器用、素直ではない
けれど包容力のある月なのだ
蒼白の光を放つ月
それは、まるで君だ

それから私は重ねられた手を見る
蒼世が、こんなことをしてくるなんて信じられなかったから
あの素直じゃない蒼世が

「どうしたの、急に…私に甘えたくなったの?ふふっ…なーんて…」

不意に抱き寄せられた身体
身を任せてしまい完全に彼の腕の中
温かかった、とても彼が愛おしかった

「蒼世…」

肩に重みを感じていたが、それがなくなり彼の顔が再び私の前に現れた
そうすれば少し寂しいような苦しいような表情を見せてポツリと呟いた

「お前が悪い」

再び抱き寄せられれば頭の後ろに手を回され今度は顔を引き寄せられた
間近で見る蒼世の顔は整い過ぎていてドキドキという音が鳴り止まない

「眞咲…」



こうなったのは本当に私が悪いと言うしかないかもしれない
それは、ある日のこと
私は蒼世にある不満を持っていて、本当に付き合っているという確証が欲しかった
それで私は蒼世に直接聞いてみることにした

「ねぇ。蒼世…私って蒼世にとって、どんな存在?」

自室にいて資料に目を通していた彼が無表情で私を見た
それが数秒続いて、また資料に目を戻す
そして暫くの沈黙
私は何気に期待していたのだ
今は彼と二人きりの部屋
どんな甘い言葉がきても二人にしか響かない音
それを凛とした声で一言

「……うるさい女」

「えー!蒼世ったらー、もう、もう一回!」


「あぁ、何度でも言ってやろううるさい女だ」

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