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Lipstick

第1章 幼い恋


土曜日。

兄の健斗が朝からウズウズしている。

「健斗、まだ来るはずないでしょ?」

「わかってるけどさぁ待ち遠しいんだよ」

「時間になったらくるんだから」

「待ってるとき程、時間が遅く感じる」


ウズウズしているのは兄だけではない。

私だってウズウズ、ドキドキしていた。

あの大切に取っておいた口紅をくれた人と
再開するんだ。

どんな人?
お礼言わなきゃ。
私のこと覚えてるかな?


記憶は無いけど、なんだか
とても楽しみだった。




「こんちはー!」

ちょっと高めの男の人の声。

「陸さんだ!」

兄が子供のように玄関へかけて行く。

「はーい」

母も追いかける。

「大きくなったな、健斗」

「もう高1ですから」

「んだよ、生意気になりやがって笑」

楽しそうな笑い声。

恐る恐る玄関を覗く。



背の高いスリムな、おしゃれな、
男の人。

カッコいい……。

私に春が訪れたのかも。

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