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Lipstick

第1章 幼い恋


その日の夜。

「今週の土曜日、陸さん来るって」

夕食時、母が嬉しそうに言う。

陸さん…?

「まじでっ?!陸さん来んの?」

「えぇ、帰国してるらしいの」

帰国…?

「やったね、また話してもらお」

「疲れてるんだからあんまりしつこくしないのよ」

「わかってるよ」


陸さんって誰だろう。
兄が知っている海外の知り合い…。

「ねぇ、陸さんって誰?」

「あら、紗知覚えてない?」

「???」

「最後に会ったのは紗知が8歳の時だったかしら。
お父さんの知り合いのお兄さんよ。
ほら、紗知に口紅くれた人」

口紅…。
あれ、陸さんって人がくれたんだ。

「健斗はよく遊んでもらってたし覚えてるわね」

「ああ。すげー楽しかった。
仕事で外国行くって聞いたときは寂しかったけど」

「すごいことよね、海外でお仕事なんて。」

「陸さんだし、当たり前だろ」


母と兄が「陸さん」の話で盛り上がる。

私の中の記憶は「口紅をくれた人」で
止まっている。

なんか、知っているはずの人だけど
知らない人。


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