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Lipstick

第1章 幼い恋


「おかーさぁーん!スカート出して!」

「ちょっとお兄ちゃん!服踏まないでよ!」

「ねぇここにあったリボンはっ?!」


中学生なんて中途半端な年齢だ。

子供だし、大人だし。

子供っぽいことをすれば
「中学生にもなってガキだ」
なんて言われるし
大人びてみれば
「中学生のくせに」
なんて言われる。

でも、逆に言えば
子供っぽくなることも大人びることも
できるって事なんだ。


「お兄ちゃんヒール出しといて」

「んで俺が……」

「どうせ今日学校なくて暇なんだから」

「たく、中1のくせになにしゃれてんだよ」


3つ上の兄が面倒くさそうに
玄関へ向かった。

「紗知、自分が寝坊したのが悪いんでしょ?!
人を使わないの!」

「お兄ちゃんはどーせ暇だしいいじゃん!」

母に答えながら手を必死に動かす。

「もー!間に合わないかも泣」

「きのう夜更かしするからでしょ」

「どーしよぉ!髪セットしてメイクしなきゃ」

「落ち着きなさい、まだ時間あるから」


友達と出掛ける当日。
寝坊をする。
私はこういう大切な日に限って寝坊
してしまう。

小学6年の時の運動会当日の朝も寝坊、
好きだった男子とデートの約束した日も寝坊、
社会科見学の日も寝坊した。

「お母さんが起こしてくれないから!」

「人のせいにするんじゃないの!
だいたい、お母さん知らなかったんだから」

確かに言うのを忘れていた。
だから自分のせいなのは充分わかっている。


「あとメイク!」

部屋に飛び込みメイク台の前に座る。
鏡に写る自分。
時間がないのによくきれいにまとまった髪。

とにかくメイクを完成させていく。
「よし!」

最後にするのは口紅。

今日はいつもと違う口紅をする。

あの日、あの人にもらった特別な口紅。



「行ってきまーす!」

自分では選ばないであろう色の口紅をつけて
家を出る。
兄と母の協力のお陰で
なんとか待ち合わせに間に合った。

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