第1章 幼い恋
~紗知~
幼い頃に抱いた恋心。
あの恋を忘れたわけではない。
でも、いまだに引きずっている訳でもない。
実家である動物園に毎週来ていた
父の知り合い。
よく知りはしないがファッション関係や
メイク関係にとっても詳しい
おしゃれなお兄さん。
その人がくれた初めてのプレゼント
『口紅』
当時8歳だった私には大人すぎるアイテム
だったと同時に憧れのアイテムでもあった。
中学生になった今、
やっとあの口紅が似合うときが来た、
と思っている。
当時、つけて大人びてみたかった気持ちを
押し殺して今まで大切に取っておいた口紅。
やっと、使える。