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死を運ぶ…

第1章 死を運ぶ文鳥


学校から帰り、急いで高広さんのもとへ向かった。

家が隣だから、大して時間もかからない。

私は、早く会いたい一心で走った。

高広さんの家の前に着いて、驚愕した。


「何で…どうして…」


空き家になってるの?

目の前には、古ぼけた家が建っている。

もともと誰も居なかった様な、そんな感じだ。


「姉ちゃん?そんなとこで何してるの?」


忠の声がして、そこを向く。


「忠…」

「家、入らないの?」


私は「入る」と呟き、空き家に背を向ける。

が、立ち止まって忠を呼び止めた。


「ここの空き家に、いつ頃から人が住んでなかったっけ」

「確か…10年くらい前からじゃなかったっけ。それがどうしたの?」

「いや……」


高広さんの存在が無かったことになってる…?

そんな、バカな。

身代わりになったら、時間が戻って皆助かる。

『君たちは助かるよ』って、そういう意味だったの?

そして私は更に、もうひとつの言葉を思い出した。

意識が途切れる前に聞こえたあの言葉。

私は走り出した。


「姉ちゃん!?」


高広さん、私…。

私全然気付かなかった。

ずっと、ずっと想っててくれたんだ。

だから守るって言ってくれたんだ。

高広さん、高広さん…。

私は貴方の気持ちには応えられないけど、だけど…。

これだけは言わせて下さい。

私は、最後に高広さんといたあの公園に入って、空に向かって叫んだ。


「高広さん、ありがとう…!」





最後に聞いた、『好きだよ』って言葉。

私は一生、忘れない。
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