第1章 死を運ぶ文鳥
「ねぇねぇ、死を運ぶ黒い文鳥の噂、知ってる?」
「知ってる知ってる。鳴き声を聞いちゃったら周りの人が死ぬってやつでしょ?」
「そーそー。しかも死に方が無惨らしいんだよね。トラックにひかれたり、高い所から落ちたり。なんでも、その死体の近くには必ず真っ黒な鳥の羽が落ちてるんだってさ」
「文鳥って、あの小さいやつでしょ?基本群れで行動してるやつ」
「うん。でも黒い文鳥は1匹でしか居ないらしいよ。隣街でその黒い文鳥を見かけたって人、居るらしい」
「こっわーい。隣街ってことは、こっちにも来てる可能性あるってことだよね。来てほしくないよー」
「いやでも、写真とか撮ってみたいな」
「あ、分かるー。どんなのか記録しておきたい!」
「だよねー。あ、そうだ今日の帰り駅前のクレープ食べに行こうよ」
「いーねー、行こう行こう」
黒い文鳥、か…。
バカバカしい噂も、直ぐ流れるんだな。
廊下の窓辺に寄り掛かり、私は小さくため息をついた。
この学校には『死を運ぶ文鳥』と言う、訳の分からない噂が流れている。
私はそんな噂、信じない。
そんなモノが存在するはずがない。
そう、思ってる。
「香織」
名前を呼ばれ、声のした方に顔を向けた。
「透!」
「待った?」
「ううん、全然」
透は微笑み、「じゃあ行こうか」と言って歩き出した。
私もその後を追い掛ける。