第3章 卒業(ラブシーン番外編)
「ナオ、どうしたの?」
私がそう声をかけるとナオはにっこり笑って立ち上がる。
「ユウちゃん待ってたんだ。渡したいものがあって」
そう言ってナオは学生服の上から2番目のボタンをはずし、私に差し出した。
「これ……、もらってくれる?」
第2ボタン……。
ナオはそれまでも地味にモテてるみたいだったけど、雑誌に載ってからは後輩や隣の学校の子までもがわざわざ見に来たりするちょっとした有名人だ。
だから第2ボタンを欲しいって子、他にもいたんじゃないかな。
「わたしがもらっていいの?」
私がそう言うと、ナオはにっこりと微笑んだ。
「うん。ユウちゃんにもらって欲しいんだ」
「ありがとう。大事にするね」
私はうれしくて、そのボタンをギュッと握った。
「ナオ、東京行っちゃうんだよね……」
私がそう言うと、ナオはなんとなく言い訳するようにあわてて話し出した。
「うん……。でも俺、電話とかメールとかいっぱいするから……、ユウちゃんもメールしてね」
「うん。いっぱいメールする」
私がそう返事すると、ナオはちょっと安心したように微笑んだ。
「でも東京で生活するなんてうらやましいなあ。私も大学は東京のほうに行こうかな」
私がなんとなくそう言うと、ナオはうれしそうな表情で私の顔をのぞき込んだ。
「ホント?」
「え? まあ受かればだけどね」
私がそう返事すると、なぜかナオが自信満々に答える。
「ユウちゃんなら絶対大丈夫だよ! 俺、応援してるね」
私はちょっと笑ってしまった。
ナオはいつもこんな感じで私を励ましてくれる。
高校受験のときも「ユウちゃんなら絶対大丈夫だから」って。
何を根拠に言ってるのかはよくわからないけど……。