第3章 卒業(ラブシーン番外編)
この道を、この制服を着て歩くのは今日が最後。
そんなことをただぼんやりと考えながら私は3年間歩き続けたその道を歩く。
今日は中学校の卒業式だった。
でも卒業したからって、ほとんどの友達が地元の高校に進学するし特にお別れって感じでもない。
卒業式で泣いたりするのって漫画やドラマの中の話なのかな。
高校の卒業式だとまた違うかもしれないけど。
だけどみんなと別れて一人で歩いていると「ああ今日で最後なんだな」と、なんとなく感慨深い気持ちになった。
帰り道の途中、神社の鳥居につながる石段に座っているナオに気づいた。
ナオは私の幼なじみの男の子。
子どものころからテレビに出る人になるのが夢って言ってた。
そして去年の夏、ある雑誌のコンテストがきっかけで芸能事務所にスカウトされ、この春ひとりで東京に引越すことになった。
そっか、ナオは遠くに行っちゃうんだな……。
ちょっと寂しい気持ちになったけど、ずっと前からわかってたことだから……。
私は笑顔を作ってナオに手を振った。