第1章 ラブシーン 前編
「ユウちゃん、こっちこっち」
駅の改札口を抜けると、手を振っているナオが目に入った。
相変わらず背が高いからすぐにみつかる。
「ナオ、また背伸びた?」
「どうかな? 最近測ってないけど」
そう言ってナオはにっこりと笑った。
子どものときから変わらない、優しくて少し頼りない笑顔。
背はこんなに大きくなったのに。
ナオは私の幼なじみ。
子どもの頃からテレビを観ていっしょに歌ったり、アニメやドラマのセリフを真似するのが大好きで、テレビに出る人になりたいってずっと言っていた。
オーディションにいくつか応募してたのは知ってたけど、本当に中学卒業と同時に「俳優になる!」って一人で東京に引越して行ったのはびっくりしたなぁ。
ナオはときどきメールや電話をくれたけど、普通に地元の高校に進学した私からしたらテレビや雑誌で見るナオはすごく遠くに行ってしまったような気がした。
でも実際会うとやっぱりナオはナオなんだ。
私はちょっとうれしくなった。